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矯正治療に関連した歯周組織に起こる合併症や問題について

2023年12月21日

最近は日本酒にハマっている院長です。

獺祭を最近飲みましたが美味しいと思い飲みやすそうなお酒から攻めております。

ザクとは違うのだよザクとは!

あと食事も日本酒に合うものを作る傾向にあるので魚料理が増えました。おじさん化しております。

今回は矯正治療を行う場合歯周組織にどのような変化や合併症をもたらすかについて触れていきたいと思います。

なぜ歯周治療に矯正治療が必要なのかですが、歯並びが原因で炎症がさらに進行し歯周炎が進行してしまう患者さんは歯周治療をある程度治っても再発してしまったりするので本当に原因を取り除くという点では矯正治療は必要と考えています。

実際、歯周治療を終えた方の矯正治療は増えてますし逆に矯正歯科からのご紹介もあります。

矯正治療を行う上で歯肉の変化や起こりうる合併症については知っておかなければならないでしょう。

矯正治療における歯周組織の健康について

プラーク・バイオフィルム:矯正治療を行うとプラーク、バイオフィルムはたくさん付着してしまいます。特にブラケットはグラム陰性細菌が定着しやすいという報告があるようです。さらに歯周病菌の一つであるAa菌などが歯肉縁下に定着しやすくブラケットを除去した後も6ヶ月続いたとされています。ブラケットは口腔細菌叢を悪い方に持って行ってしまうようです。

歯肉炎・歯肉増殖肥大:バイオフィルムが付くことにより歯肉炎が引き起こされ歯肉増殖肥大を引き起こします。さらに歯列拡大により肥大は起こりそれは矯正治療後3ヶ月から2年継続するようです。

矯正治療による歯肉炎と肥大増殖

アタッチメントロス、歯周ポケット:アタッチメントロスはさほどおこらないとされており、歯周ポケットは0.23mm増加するとされる。

歯槽骨の喪失、歯根吸収:X線写真での研究では歯槽骨は0.13mm減少するとされています。CTの研究では1mm程度ですが抜歯矯正では2mm程度の減少があった。歯根吸収は矯正負荷による炎症によりセメント質が吸収されることで起こりますが、避けることはできないとされてます。なので早期に発見するために年2回のX診査、長期の治療をやめる、軽い断続的な力で動かすなどです。もし認められた場合2−3ヶ月の治療の中止を推奨される。

矯正治療による歯根吸収
歯周治療後矯正治療を行い再度歯周治療を行なったケース

矯正治療における歯周炎の影響について

矯正治療を行う前に歯周炎はコントロールされていなければならない。

矯正治療が必要な歯周炎治療に成功した患者:治療が成功し歯周組織が安定した患者の矯正治療はコンセンサスが得られている。ただし、ステージ4の重度歯周炎患者ではPPD5mmでBOPがないこと、6mm以上のPPDがないことが必要である。ただし、再発のリスクがあるため再評価は必要である。

未診断、未治療の歯周炎を患い、歯科矯正治療を受けている患者:矯正治療を受ける患者は歯周病のスクリーニングを受け未診断、未治療は避けなければならない。

未治療の歯周炎を患っており、歯周病および歯科矯正治療が必要な患者:歯周治療のガイドラインどうりに治療し上記のエンドポイントを達成されたら矯正治療を行う。非外科の場合は3-6ヶ月、歯周外科後6ー9ヶ月、再生療法の場合12ヶ月待ってから矯正治療を行う。

再生療法後の1ヶ月と6ヶ月の矯正開始時期は同等というデータがあるため現在は1ヶ月後でも良いとされている。

重度歯周炎患者の治療後矯正治療を行なったケース

歯列矯正治療を受けている未発見の初期歯周炎患者:これはしっかりと歯周病の診断を受けていない患者で起こります。矯正治療中に歯周炎の症状が悪化してくるためモニタリングをしっかりやっていない場合に起こる。

矯正治療中に歯周治療が悪化したケース

歯周病は健康だが歯周炎になりやすい患者で歯科矯正治療を受けている:このシナリオでは歯周病は問題なしと判断されたが矯正治療途中に悪化してくる場合でモニタリングが重要であると思われる。

矯正治療による治療ミスを防ぐには:歯肉のモニタリングが必要で3ヶ月おきに確認する必要性があるとされている。もし歯周炎の兆候が認められたら直ちに中止する。

歯周病患者の矯正治療のフローチャート

矯正治療による歯肉粘膜への影響

歯肉退縮:歯肉が下がり歯根が露出することを言いますが、知覚過敏症、う蝕、審美障害などを引き起こします。

下の前歯が最も発生率が高い

歯肉のフェノタイプ・歯肉の厚さ:歯肉の厚みと骨の厚みを示すものです。歯肉の厚みが薄いと歯肉退縮が起こります。

角化歯肉の幅:角化歯肉2mm以下の幅だと角化歯肉の損失のリスクがある(6.1%)

下顎前歯の歯肉退縮、歯を失うリスクすらある
矯正後下顎前歯の歯肉退縮が起こった

骨のエンベロープ:歯の位置が唇側もしくは舌側に行きすぎると歯槽骨から逸脱し歯肉退縮のリスクが上がる。

頬側に歯列を広げた結果歯肉退縮が認められる
歯列は改善されたが歯肉退縮は治療前より悪化している

矯正治療による歯の位置の変化:矯正治療が終わった後も歯の位置は変化するため歯肉は変化する可能性がある。よく下顎の前歯の裏につけるFixリテーナーは5年で位置が安定しているのは90.5%とした。

ワイヤー症候群:矯正後の後戻りにより歯が移動した
矯正治療中に歯を失ったケース

矯正治療を受けている患者の歯肉のフェノタイプの変化:歯を動かすと歯肉の厚みや骨の薄さは変わる。角化歯肉が2mm以下の場合事前に強化しておくことが望ましい

矯正前に骨の形態を改善したケース
矯正前に結合組織移植を行い事前に歯肉のバイオタイプを改善したケース
根面被覆を行なった後1年後に矯正治療を行なったケース

歯肉裂開:歯のスペースを閉じる時に起こると言われている。特に歯の動きが早い人に多いとされてる。

歯間乳頭の喪失:いわゆるブラックトライアングルのことをいい発音障害、審美障害を引き起こす。

Nordland と Tarnowは骨頂部と接触点の間の距離が 5 mm 以下の場合、乳頭が存在することを示した。骨頂から接触点までの距離が 6 mm と 7 mm の場合、これはそれぞれ 56% と 27% 低下しました。

歯の位置を近づけることで改善することもできるとされています。

歯肉の厚みを増大しスペースを閉じて歯間乳頭を再建したケース
上顎前歯のスペースを閉じ歯肉増大することで歯間乳頭増大を行なったケース

最後まとめですが、矯正医治療前には歯周治療は必要で、治療後もモニタリングはしっかり行うべきである。

また矯正治療は粘膜歯肉の状態に悪影響を与える可能性があり、特に歯肉の表現型が薄い状況では、歯肉退縮欠損が生じる可能性があります。治療前に患者に説明し、予防的な表現型の変化を考慮する必要があります。 歯列矯正後の歯の位置の変化は、保定装置の使用の結果として発生し、後退欠損/歯根露出の増加につながる可能性があります(「ワイヤー症候群」)。

かなり内容が濃い論文で読み応えがありました。24ページもあったし、、、

でも事前にしっかり患者に説明することが大事で予測しながらモニタリングを行う必要があることがわかりました。

榎本拓哉 院長
榎本拓哉 院長
歯学博士

榎本拓哉 院長 歯学博士

2009年 北海道医療大学 歯学部 卒業。
昭和大学大学院にて歯周病を専攻し、2017年に日本歯周病学会
専門医を取得。
首都圏の歯科医院にて勤務医を経験。
2019年4月 札幌市にてえのもと歯科
開院。

医院名:えのもと歯科
所在地: 〒063-0845 北海道札幌市西区八軒5条西9丁目4-21
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